これは、あなたが不安や妄想のとりこになってしまったときに、そこからのがれて、リラックスした心を取り戻すためのテクニックです。「思考停止法(Thought
stopping)」というこのテクニックは、1928年にベインが『思考のコントロール』の中で提唱し、1950年代以降、強迫観念や恐怖症の治療のために用いられるようになりました。
強迫観念にとらわれると、頭のなかから、いつもなら「バカバカしい」と片付けてしまえるような考えが去らなくなります。
たとえば、
「自分はガンじゃないのか」
「友だちに嫌われてしまったんじゃないか」
「会社をクビになるんじゃないか」
「もし家賃が何万円も値上げされたら、この家を出ていかなければならない」
といったような、まったく根拠のない不安や、
「自分にこんな仕事ができるわけない」
「試験を受けても落ちるにきまっている」
「あんな人たちとつきあえるほど、自分は立派な人間じゃない」
といったような極端に悲観的な考えなどです。
思考停止法は、まずこういった「バカバカしいと思っても去らない考え」に思考を集中させ、突然それをストップします。そのことによって、頭の中をからっぽにするというテクニックです。
「ストップ」の命令は、あなた自身の声が、時計のアラームや輪ゴムをパチンとはじく音などのように機能します。
なぜ、このような簡単な方法が強迫観念や恐怖症の治療に実際に効果があるのかについては、次のような3通りの説明があります。
- 「ストップ!」の命令が、一種の罰として機能するため、何度も罰を受けているうちに、そのような思考をしなくなるから。
- 「ストップ!」の命令が、そのような考えから思考を転換するきっかけをつくってくれるから。また、自分に強く命令を与えるという状況が、強迫観念の存在する余地を残さない
- 「バカバカしい考えだ」と強く否定しようという気持ちが、自然と他の楽観的な考えにつながっていくから。
恐怖や不安といったネガティブな「感情」は、ネガティブな「思考」のあとに発生します。これは多くの研究によって裏づけられている事実です。ですから、そうしたネガティブな思考をうまくコントロールするコツを身につければ、あなたのストレスは急速に解消されていくでしょう。
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