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〈1〉最適な睡眠のリズム |
十分な睡眠といっても個人によって感じ方が違うものです。身体的に満ち足りていることと感覚的に満足している状態は違います。「よく眠れない」という訴えは、うつ状態や精神的な不安定をあらわしていることがあります。不眠には「夜なかなか眠れない」「朝早く目が覚めてしまう」「夜中に目が覚めてそれから眠れない」「寝た気がしない」などさまざまな形があります。人によって必要な睡眠時間は違うものですが、50%以上の人は6時間で十分なようです。
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不眠の定義 |
日本睡眠学会によると不眠の定義は次のようになされています。
- 入眠障害…夜間なかなか眠りにつけず、寝つくのに普通より2時間以上かかってしまう。
- 中途覚醒…寝ついても夜中に目が覚めやすく、2回以上の覚醒がある。
- 早朝覚醒…朝、普段よりも2時間以上早く目が覚める。
- 熟眠障害…朝起きた時に、ぐっすり眠った感じがしない。
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リズムと体内時計 |
「眠り」について考えるとき、2つのリズムについて知ることが必要です。1つは、寝て、起きてまた寝るという「1日24時間」のリズム。そして、もう1つは眠っている間の“眠りの深さ”のリズムです。
私たちはもともと25時間を1日として過ごすリズムを持っています。これを体内時計といいますが、私たちの毎日は1日が24時間で回っています。この1時間のズレを放っておくと、寝たい時に眠れない、寝てはいけない時にとても眠い、といった状態になります。このズレを修正するのに最もよいのは、朝目が覚めた時に明るい光をしっかり浴びることです。目から入る光の刺激は体内時計をリセットしてくれます。
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(「ぐっすり眠れる快眠学」PHPより 一部改変〕) |
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また、私たちの眠りは、ほぼ1.5時間の周期で深くなったり浅くなったりを繰り返しています。そして、一晩にこれを3〜5回繰り返して目が覚めるのです。つまり目が覚める(覚まされる)タイミングが眠りに入ってから1.5時間ごとに訪れます。眠りが最も浅くなった時期を外れて起きると、頭がボッーとしたり、気分が悪い状態で目覚めます。ですから、目覚し時計は、眠りに入ってから1.5時間の何倍かの時間を見越してセットすると、少々寝る時間が短くてもすっきり目覚めることができます。
私たちが生まれながらに持っている健康なリズムを上手にコントロールすること、それが健康な毎日を過ごす秘訣なのです。 |
脳波で見る眠りの深さ |
1929年に脳波が発見されてから、眠りについての科学的な解析が加速されました。これにより、眠りの深さや種類も判別できるようになりました。
脳波の研究から、睡眠は4段階に分けられ、各段階の脳波は次のように定義されています。 睡眠第1段階
… シータ波 うつらうつら、まどろみ状態
睡眠第2段階 … シグマ波 すやすや、浅い眠りの状態
睡眠第3段階 … デルタ波(シータ波が少し混じっている)ぐっすり状態
睡眠第4段階 … デルタ波(シータ波がほとんど消える) ぐったり状態
アルファ波はいろいろなところで耳にしたことがあると思います。目を閉じ、緊張が解ければあらわれる「心身安静パターン」です。そして次にあらわれるのがシータ波です。まだかすかに意識があり、周りの物音がおぼろげに聞こえる、覚醒から睡眠への移行期です。
さらに、頭の中でめぐっていたかすかな意識が遠のく第2段階を経て、いよいよ本格的な眠りである第3、第4段階へと進んでいきます。一晩の眠りは図に見られるように、この4つの段階を何度か行ったり来たりしながら次第に眠りが浅くなり目覚めるのです。
この1つのサイクルが1.5時間で、眠りのワンセットということになります。 |
眠りは脳のメンテナンス |
人間の大脳はすばらしく発達していて、いろいろな仕事を一極集中して引き受けています。この大事なコントロールセンターは大量のエネルギーを費やして感情や記憶などの高度な意識レベルの情報処理を行なっているのです。このコントロールセンター(大脳)をメンテナンスする役割を担うのが「睡眠」なのです。
筋肉の疲れは眠らなくても取り去ることは可能です。しっかりと食べ、風呂に入って筋肉のケアをするとずいぶんと元気になります。しかし、脳の疲れは、安静、栄養補給などでは不充分で、まずは「眠たい」とシグナルを出します。
そして、眠っている間に次の活動に備えて「脳のメンテナンス」を行なうのです。
私たちの体内に内蔵された「体内時計」は夜になると眠りたくなるようにセットされています。眠気は大脳が疲れたサインなのです。そして、眠気を自覚できるのは、意識がまだある証拠でもあります。これを無視して気合を入れれば、ある程度は起きていることも可能ですが、それにも限界があります。
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労働時間と疲労度 |
全国の労働者を対象にしたいくつかの調査で、職場不適応の要因として共通してあげられるものが職場の人間関係、仕事の量、仕事の質です。
仕事の量の中でも、労働時間の長さは特にストレスに影響するといわれています。週60時間以上もの労働や月50時間以上もの残業があると、高血圧を発症させたり、悪化させる可能性があるという報告があるくらいです。残業時間や実労働時間が長いほど、心疾患の発生率が高くなり、突然死の判定基準としても重視される重要な要因なのです。
週50〜60時間以上の長時間労働を行っている人は労働者の約半数近くいるというデータがあり、長時間労働が体に悪いと分かっていても休めない、という人が少なくないようです。このような長時間労働を続けると、約3割の人が疲労感を訴えるようになり、特に連続して長時間働いた場合では、休みながら働いた人よりも疲れが取れにくい傾向があります。同じ労働時間をこなすのでも、根を詰めすぎずに適度な休息を取りながらの仕事の方が能率も良く、疲れ方も軽くなります。
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日勤者で、週実労働時間別にみた疲労自覚症状と睡眠症状の愁訴率
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時間区分 |
自覚症状愁訴率(%) |
睡眠症状愁訴率(%) |
40時間未満 |
24.7 |
17.2 |
40-49時間 |
24.3 |
17.2 |
50-59 |
27.6 |
18.0 |
60-69 |
30.4 |
18.5 |
70-79 |
33.1 |
18.7 |
80-89 |
32.7 |
20.1 |
90-99 |
39.5 |
20.6 |
注)年齢調整した値 |
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