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家族のうつ病への理解が救いになる
からだの病気なら、その不自由さがわかり、自然な接し方ができるでしょう。ところが、こころの病気だと、病気そのものへの理解が乏しいこともあり、自分勝手な考えでお節介をやいてしまうことがあるのです。
誰でも自分が経験した範囲でしか考えられず、あの落ち込みが少しだけ強く出たのかなと思いこみがちです。だから「カルシウムを飲めばよくなる」「鍼灸の先生が治してくれる」などと、善意から熱心に勧めたりします。
こころの病気でも、からだの病気で療養中の方に接する姿勢と同じような態度をとっていただければ、診察室だけで会う医師と違い、いつも一緒にいる家族の態度は本人にとって貴重な支えになります。
うつ病とその治療法、家庭での休養などについて、家族が正しく理解することで、適切な対応ができるでしょう。
家族に伝えられるうつ病の実態
1
病気であるが、本人は心配かけまいと無理を続けていた。
2
心身のエネルギーが乏しいうつ病のもたらす辛さをともに知る。
3
誰でもがかかる可能性のある病気である。
4
薬物治療と休養、栄養が治療の3本柱である。
5
おっくう感が残る段階では、体を少しずつ動かしていく。
6
焦りは症状が残っている証拠であり、退屈感が出るまで出勤は控える。
7
症状が消えた後も2年間以上の服薬をすることで、再発を予防する。
うつ病の方は、疲れた表情をみせながらも職場に出かけたり、やっとの思いで家事をこなしているのです。そのため家族は、しんどい病気にかかっているとは考えません。うつ病の方は、辛い思いを抱きながら無理を重ねて日々を送っているのです。しかも家族に心配をかけるので、この苦しさを知られたくなく、さらに理解できないだろうと思いこんでいます。
家族はうつ病の方に元気がないのは、「気のゆるみ」とか「だらしがない」「怠け者」などと思いこみ、病気だと認めないものです。本人の自覚と家族の認識との間には大きなズレがあります。そこで本人も家族も、病気であることを納得しなければなりません。
何もなかったようなそぶりのために、家族でさえも病気に気づかずにいます。でも、ついに本人は状態が悪化したため休みはじめ、ようやくまわりに知られるようになるのです。ところが本人でなければ、病気による本当の辛さはわかりません。
怪我や骨折など五体の障害とは違って、主な症状がうつ気分や全身の倦怠感、悲観的な考え、自己嫌悪、不安、焦りなどの心理的な状態であることは、他人に伝わりにくいのです。
乏しくなったエネルギーを回復させるのには、薬と休養、栄養が必要です。薬が効果を発揮しはじめるのには、1〜2週間はかかります。しかも、その前に不快な副作用の起こることが予想されます。そのため服薬を勝手にやめてしまう恐れがあるのです。ですから、病気の回復のために服薬を続けるよう管理することが求められます。
薬について、家族は「頼りすぎたら困る」とか「癖になったり、ボケる」などと不信感をのぞかせる場合があります。外からはみえない脳に働く薬なので、理解しにくいかもしれませんが、その言動は本人の迷いにつながります。疑問があれば納得のいくまで医師に質問して、説明を受けてください。
うつ病の方は休養が苦手です。
「趣味が仕事、特技が残業、休日も職場の日々」を送ってきた方が、うつ病になりやすいのですが、この行動パターンをなかなか変えられません。ゆったりとした気持ちでいることに、罪悪感を抱いてしまいます。早く回復して、遅れをとりもどしたいと焦っているのです。これでは治る病気も治りません。
本人がゆったりと休養できるように、家族は家事や育児などの役割の肩がわりをするなど、協力が欠かせません。
本人は復職することに焦りを覚えますが、退屈感を訴えるまでは、休養を中心とした生活を送れるようにします。責任感や義務感、焦りの気持ちで動きだしても長続きしません。つまずけば、情けない思いを強くするだけです。家族はエネルギーが少しずつ貯えられていくのを温かく見守りましょう。
回復期を迎えると、一日も早く社会復帰したいと焦ります。その一方、社会復帰が順調に進むだろうかと心配もしているのです。家族は、その気持ちに振りまわされず、焦っていればブレーキをかけ、心配ならば相談に乗ってあげましょう。生活のリズムが規則正しく、余裕をもてていれば、社会復帰はきっと円滑にいくと思います。
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