 |
|
 |
 |
 |
この話は実際にあった話で、記録映画としても残されています。
母親からの肉体的なストロークが欠乏したため、発育異常をきたしてしまったスーザンという女の子が、病院において肉体的ストロークを充分に受けて、第二の成長のチャンスをつかんでいくので、記録映画の題名は『セカンド・チャンス』となっています。
|
◆
|
スーザンが父親につれられて病院にきたのは、1歳10ヵ月の時でした。
ふつうの発育の状態なら、もう上手に歩きまわったり、言葉もかなり話せるようになっているはずです。しかし、入院当時のスーザンの体重は6.75キロ、身長は71センチで、これを米国の乳児の平均値と比較してみると、体重は5ヵ月児、身長は10ヵ月児に相当するものでしかありません。
もちろん、スーザンは歩けません。それどころか、はいはいすることもカタコトをしゃべることもできなかったのです。おまけに誰かが近づくと泣いてしりごみをして、抱かれたり、さわられたりするのを嫌がっている状態でした。
いろいろな医学的な検査の結果、スーザンの身体には何も異常はないということがわかりました。
つまり、骨の異常とか内分泌の異常とか、医者が考えられるような“発育不全”の原因は何もみつからなかったのです。医師たちは当惑しました。けれども、ひょんなことで、その原因がわかったのです。
それは、スーザンが入院してから三週間もたつのに、一度も両親が面会にこない、という事実からでした。
そこでソーシャル・ワーカーが両親のところを訪ねました。
そこでわかったことは、スーザンは教育のある若い両親の最初の子供として生まれたのだけれども、期待されて生まれてきた赤ちゃんではなかったので、何かにつけてジャマモノ扱いにされ、母親からも父親からもほとんど面倒らしい面倒を見てもらえなかったという状況でした。その時スーザンの母親は、「あの子は反抗的で、抱かれるのが嫌いなんです。むしろ、放っておかれるほうが好きなんですよ」と言い、さらに「私はあの子を嫌いです。もうこれ以上あの子の面倒は見たくありません」と言うのです。
そこで病院ではスーザンの病名を“母性的愛情欠乏症候群”と名づけ、発育不全の原因は、母親のストロークが欠乏したからだ、と判断しました。
病院の医師たちはボランティアの看護師を募って、その人にスーザンの母親代わりをさせることにしました。代理の母親は、一日に6時間、つきっきりで抱いたりあやしたり、肉体的、心理的ストロークを与え続けました。また、代理の母親だけでなく、医師をはじめとする病院のスタッフも、スーザンにはなるべくストロークを与えるようにしたのです。
数週間のうちに、スーザンは、抱かれることをさほど嫌がらなくなり、泣きさけぶことがなくなって、むしろ少しずつ反応さえ示すようになってきました。そうして2ヵ月後には、体重は2.7キロ、身長は5センチも伸びたのです。運動機能も情緒も驚くばかりに発達し、はいはいができるようになり、知らない人にもこわがらずに接することができ、自分が遊ぶためのオモチャやいろいろな物に対しても興味を示すようになりました。
それから数週間後、あのはいはいもできなかったスーザンが、ひとりで病院の廊下を歩き出すことができるようになったところで、映画は終わりになります。 |
◆
|
スーザンのケースは、ストロークが欠乏して、“ストロークの飢餓状態”になってしまった恐るべき結果を示しています。人間は、無視されて、ストロークをもらえない状態、つまり“ストローク飢餓”の状態に追い込まれることを、本能的に恐れています。
よく、父親のふれ合いがあまりない子供が、わざわざ叱られるようなことをやりますが、これは、たとえ叱られるようなことでも、全く無視されてしまうよりはましだからなのです。
叱られるようなストロークのことを、否定的なマイナスのストロークと言いますが、チクチクした嫌なマイナスのストロークであってもそれさえあれば、全く関心を示してもらえないストロークがない状態よりはましなので、無意識的にそれを求めるようになってしまうのです。 |
 |
|
* i n f o r m a t i
o n ! |
|
i n f o r m a t i
o n ! * |
|