(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケア
イ 事業場内産業保健スタッフ等によるケアの推進
(イ)職場環境等の改善
a 職場環境等の実態の把握及び評価
事業場内産業保健スタッフ等は、職場巡視による観察、職場上司及び労働者からの聞き取り調査、ストレスに関する調査票による調査等により、定期的又は必要に応じて、職場内のストレス要因を把握し、評価すること。
職場環境等を評価するに当たって、職場環境等に関するチェックリスト等を用いることによって、人間関係、職場組織等を含めた評価を行うことも望ましい。
b 職場環境等の改善
事業場内産業保健スタッフ等は、職場環境等の評価結果に基づき、管理監督者に対してその改善を助言するとともに、管理監督者と協力しながらその改善を図るよう努めること。
(ロ)労働者に対する相談対応等
a 気づきの促進と相談への対応
事業場内産業保健スタッフ等は、管理監督者と協力したり、職場環境等に関するチェックリストを使用する等により、労働者のストレスや心の健康問題を把握し、労働者の気づきを促して、保健指導、健康相談等を行うこと。
心身両面にわたる健康保持増進対策(THP)を推進している事業場においては、心理相談担当者による心理相談を通じて、心の健康に対する労働者の気づきと対処を支援すること。また、運動指導、保健指導等のTHPにおけるその他の指導においても、積極的にストレスや心の健康問題を取り上げることも重要である。
b 職場適応、治療及び職場復帰の指導
事業場内産業保健スタッフ等は、心の健康問題を持つ労働者の職場適応を管理監督者と協力しながら支援すること。さらに、専門的な治療が必要と考えられる労働者に対しては、その意思に配慮しつつ、適切な事業場外資源を紹介し、必要な治療を受けることを助言すること。また、休業中の労働者の職場復帰について、管理監督者及び事業場外資源と協力しながら指導及び支援を行うこと。
(ハ)ネットワークの形成及び維持
事業場内産業保健スタッフ等は、事業場と事業場外資源とのネットワークの形成及び維持に中心的な役割を担うこと。
ロ 事業場内産業保健スタッフ等の役割
心の健康づくり活動におけるそれぞれの事業場内産業保健スタッフ等の役割は、上記に示したほか、それぞれの種類に応じて次のとおりである。
(イ)産業医等
産業医等は、職場環境等の維持管理、健康教育・健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置のうち、医学的専門知識を必要とするものを行うという面から、事業場の心の健康づくり計画に基づく対策の実施状況を把握する。また、専門的な立場から、セルフケア及びラインによるケアを支援し、教育研修の企画及び実施、情報の収集及び提供、助言及び指導等を行う。就業上の配慮が必要な場合には、事業者に必要な意見を述べる。専門的な相談・治療が必要な事例については、事業場外資源との連絡調整に、専門的な立場から関わる。
(ロ)衛生管理者等
衛生管理者等は、事業場の心の健康づくり計画に基づき、産業医等の助言、指導等を踏まえて、具体的な教育研修の企画及び実施、職場環境等の評価と改善、心の健康に関する相談ができる雰囲気や体制づくりを行う。またセルフケア及びラインによるケアを支援し、その実施状況を把握するとともに産業医等と連携しながら事業場外資源との連絡調整に当たる。
(ハ)保健婦・士等
衛生管理者以外の保健婦・士等は、産業医等及び衛生管理者等と協力しながらセルフケア及びラインによるケアを支援し、労働者及び管理監督者からの相談に対応するほか、必要な教育研修を企画・実施する。
(ニ)心の健康づくり専門スタッフ
事業場内に心の健康づくり専門スタッフがいる場合には、これらの専門スタッフは他の事業場内産業保健スタッフ等と協力しながら、職場環境等の評価と改善、教育研修、相談等に当たる。
(ホ)人事労務管理スタッフ
人事労務管理スタッフは、管理監督者だけでは解決できない職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理上のシステムが心の健康に及ぼしている具体的な影響を把握し、労働時間等の労働条件の改善及び適正配置に配慮する。
ハ 事業場内産業保健スタッフ等によるケアを推進するための環境整備
(イ)事業場内産業保健スタッフ等への教育研修及び情報提供
事業者は、事業場内産業保健スタッフ等に対して、以下に掲げる項目等を内容とし、職務に応じた項目については専門的なものを含む教育研修、知識修得等の機会の提供を図ること。
a ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識
b 事業場内産業保健スタッフ等の役割及び心の健康問題に対す る正しい態度
c 職場環境等の評価及び改善の方法
d 労働者からの相談の方法(話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)
e 職場復帰及び職場適応の指導の方法
f 事業場外資源との連携(ネットワークの形成)の方法
g 教育研修の方法
h 事業場外資源の紹介及び利用勧奨の方法
i 事業場の心の健康づくり計画及び体制づくりの方法
j セルフケアの方法
k ラインによるケアの方法
l 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報
m メンタルヘルスケアに関する事業場の方針
n 労働者のプライバシーへの配慮等
o 職場でメンタルヘルスケアを行う意義
(ロ)事業場内産業保健スタッフ等への支援等
事業者は、事業場内産業保健スタッフ等に対して、心の健康の保持増進に関する方針を明示し、実施すべき事項を委嘱又は指示するとともに、必要な支援を行うこと。
また、事業者は、事業場内産業保健スタッフ等が労働者の自発的相談等を受けることができる制度及び体制を、それぞれの事業場内の実態に応じて整えること。
さらに、事業者は、事業場内産業保健スタッフ等が事業場外資源の活用を図れるよう、必要な措置を取ること。
なお、大規模事業場及び一定規模以上の事業者では、事業場内に又は企業内に、心の健康づくり専門スタッフを確保することが望ましい。また、心の健康問題を有する労働者に対する就業上の配慮について、事業場内産業保健スタッフ等に意見を求め、これを尊重することが望ましい。
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