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職場において、上司の役割は、経営上与えられた業務を遂行し達成することです。
このためには、働きやすい環境づくりに心がけ、適切な業務命令を発し、一人ひとりがいきいきと働けるように配慮することが大切です。
すべての労働者は、日々変わりゆくこころの状態にあり、その中で職務に就いています。時には、沈みこむことがあるでしょうし、気が散って仕事に集中できないという状況もあり得ます。こういうことの事前防止、トラブルにつながる前の対応、不幸にしてこころの健康問題が生じた場合の手助けなど、各人がはつらつとして、十分な能力を発揮できるようにするために、上司が配慮すべき点は少なくありません。
以下にそれらの内容を概説します。
◆職場環境の改善
労働者のこころの健康には、職場環境や仕事の内容などが影響を及ぼします。
管理者は、常にこれらの問題点を把握し、改善することによって、良好な職場環境を維持するよう努めなければなりません。
このためには、職場巡視や作業結果の報告、労働者から意見聴取した内容、あるいはストレスに関する調査の結果などを通じて、具体的な問題点の把握に努めるとともに、それらの改善のために、職場環境、仕事の内容の見直し、そして組織の見直しなど、幅広い観点からの対策を講じることが期待されます。
そして対策の効果を定期的に把握し、必要があれば、さらに効果的な対策を考え、進めるようにして、全体が善循環サイクルに進められるようにするとよいでしょう。
改善措置を講じる際にも、部下の意見を尊重する姿勢が望まれます。
◆個々の部下への配慮と相談対応
上司は、個々の部下の能力や経験、そして日々の様子などをよく知った上で、過度な疲労、心理的負荷が生じないよう、仕事を命じ、適切な就業管理を行わなければなりません。そして部下が過労と感じたり、強度の心理的負荷を負っていないか、また何か悩みごとを抱えていないかなどについて、関心をもつことが大切で、日常、部下の話をよく聴き、何かあれば相談にのれるように心がけてください。
場合によっては、事業場内産業保健スタッフや事業場外資源(事業場外でメンタルヘルスへの支援を行う地域の保健機関、専門家など)への相談・受診を勧めるなどの対応が求められます。
次に、部下のこころの健康問題に気づき、的確な対応を講じる上で参考となると思われる点を解説します。
1.部下をよく知る
部下一人ひとりは、生まれ持った資質が異なり、成長の環境も一様ではありません。
また、現在おかれている状況も、能力、健康状態、家庭環境、悩みなどさまざまです。これら、来歴や環境について必要な範囲で、部下のプロフィールを把握しておくことは大切なことです。
背景や普段の様子をよく知らなければ、その人の変化に気づくことができませんし、どう対応してよいかもわかりません。上司の同じ一言であっても、ある人はあまり気にしないが、ある人はひどくこころを痛めてしまうということは、よく経験されることです。
部下が心身の状態を乱した時に家族と話す必要が生じた場合、どの人に話したら快く協力してくれるか、ということなども知っておきたいことです。
2.細かい変化を見逃さない
「部下の精神状態など、専門家でないからわからない」という意見を聞くことがありますが、逆に専門家であっても、日頃の様子がわからないために、状況の把握に手間どることがあります。
部下の様子をよく知っている上司が、一人ひとりのコンディションに目を配り、関心を持って接することは大切なことです。気づきが早いほど対応がとりやすく、大きなトラブルを回避できることが少なくありません。
自分の子供をみるように、あたたかい眼差しで眺め、必要なら、指導、支援の労を惜しまないようにしたいものです。
3.必要に応じた対応を迅速に
こころの健康問題への対応は、「よく話をすればよい」、「不平・不満を解消してやる」というレベルから、「専門家の判断に任せる必要がある」あるいは「専門的治療を要する」などさまざまです。
時には、家族との連携を要する場合がありますし、主治医の指示に従って対応しなければならないこともあります。そして、上位職者や人事部門と相談して、人事上の措置を講じなければならないケースも想定されます。
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