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精神障害の分類と診断名
統合失調症
躁うつ病(気分障害)
神経症
摂食障害(拒食症、過食症)
パーソナリティー障害
薬物依存症
アルコール依存症
久里浜式アルコール依存症
依存症の種類
心身症
外傷後ストレス障害(PTSD)
急性ストレス障害
適応障害
自律神経失調症
自律神経失調症調査表
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パーソナリティー障害 |
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人格(パーソナリティー)とはその人に特徴的で一貫性のある認知(自分や他者、出来事に対する認識の仕方)、感情、行動のあり方をすべて包括した概念で、その人らしさを表わしているものといえます。
パーソナリティー障害は、人格がその人が属する文化とは大きく偏って固定化したために周りに適応できなくなっている状態のことです。その結果、本人や周囲の人を巻き込んで苦しむようになります。
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◆主な特徴 |
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- 見捨てられることに強い不安を持ち、現実や想像の中で見捨てられることを避けようと異常な努力をします。
- 対人関係が不安定で激しく、ある人に対して理想化とこき下ろしの両極端を揺れ動きます。
- 目標や価値観、職業選択などについての考えや計画が突然変化するなど、自分についての不安定さが続きます。
- 自己破壊的な衝動性を示します。(例:浪費、性的逸脱行為、無謀な運転、むちゃ食いなど)
- 自殺のそぶりや行動、脅しや自傷行為を繰り返します。
- 感情が不安定で、短時間の内に良い気分からイライラ、抑うつ、不安などに揺れ動きます。
- 慢性的な空虚感に悩まされます。
- 激しく怒り出したり、その怒りを抑えることができません。そのため、頻繁にかんしゃくを起こしたり、取っ組み合いのけんかを繰り返します。
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パーソナリティー障害の根本には、理想化した相手から見捨てられたくない、という願望があり理想化が激しい分、些細なことで見捨てられたように感じてしまいます。
相手の好意を確認するために、「今すぐ会いに来てほしい」と言ったり、無理な要求を求めます。そして、それが叶えられないと見捨てられたように感じて、相手を激しく罵倒します。
また、自傷行為や自殺のそぶりは、死にたいというより自分のつらさを分かって欲しいという救いを求めるためのものが多いようです。
パーソナリティー障害は、青年期や成人期早期に始まることが多く、長期にわたります。
また、この障害による生活上の困難が、ある時点で急に始まっている場合には、うつ病などの「気分障害」や統合失調症などの「精神病性障害」が疑われる場合があるので、専門医の診断をあおぐようにしてください。
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◆障害の特徴 |
パーソナリティー障害の特徴である「パーソナリティーの偏り」は、生まれつきの素質が影響していたり、成長していく過程において、偏りのパターンが固まってしまったものだと考えられます。しかし、そのメカニズムは、まだ明らかになっていません。そのため、現在のパーソナリティー障害の診断は、症状ごとに分類されています。
ところが「パーソナリティー」は、本人にとってはごく当たり前なものなので、患者さん自身が「パーソナリティーの問題」を認識するのは困難です。そのため、医師や研究者が行なった人格障害の診断には、かなりのばらつきがあることが知られています。
以下にパーソナリティー障害の分類を簡単に説明しますが、おおまかな目安としてとらえてください。
パーソナリティー障害は特徴別に、3つのグループ、計10種類に分けられています。A群、B群、C群と分けられている3つのグループの特徴を紹介します。
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奇妙な行動や考え方をする「A群」 |
統合失調症によく似た傾向を持っています。統合失調症ほどはっきりした症状はありませんが、自閉的で、妄想を抱きやすく、奇妙で風変わりな傾向があります。
A群には次のようなパーソナリティー障害が含まれます。 ●「妄想性パーソナリティー障害」
他人の言動などを“悪意のあるもの”と解釈するといった、不信と疑い深さをもつことが特徴です。 ●「統合失調質パーソナリティー障害」
内向的で、ひきこもり・孤独を好み、感情を表に出したりするようなことはなく、よそよそしいふるまいをします。「人間」に興味がなく、そのため社会から孤立します。
●「統合失調型パーソナリティー障害」
他人の言動などを“悪意のあるもの”と解釈するといった、不信と疑い深さをもつことが特徴です。
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感情が不安定で激しい「B群」 |
感情的な混乱の激しいパーソナリティー障害です。芝居がかった言動が多く、情緒的で、移り気にみえる場合が少なくありません。また、ストレスにかなり弱い傾向があります。
B群には次のようなパーソナリティー障害が含まれます。 ●「反社会性パーソナリティー障害」
反社会的な言動や、行きすぎた場合は犯罪行動をとるケースもあります。物質的な利益や個人的満足のために他人を利用し、人の心理を読んで操作するのがうまく、良心に乏しいので、ほとんど罪悪感を感じることはありません。
●「境界性パーソナリティー障害」
非常に衝動的で、感情の起伏が激しく、そのため対人関係がいつも不安定です。その結果として、衝動的な暴力や迷惑行為、性的誘惑を繰り返したり、自殺を企てたり、自分を傷つたりする行動を続けます。
●「演技性パーソナリティー障害」
常に周囲の人の関心を集め、自分が中心でいないと気がすみません。外見を気にし、芝居がかった態度をとります。 ●「自己愛性パーソナリティー障害」
自分は特別なものだと感じ、大きな優越感をもっています。そのため、さまざまな対人関係の障害が出てきます。自分のことを非難されることはとても耐えることができず、そのため、心がふさいで不快な気分になる抑うつ状態に陥ることもあります。
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不安や恐怖感の強い「C群」 |
不安やおびえ、引きこもりなどを特徴とするパーソナリティー障害です。まわりの人の自分に対する評価や視線などが非常にストレスになる傾向があります。
C群には次のようなパーソナリティー障害が含まれます。 ●「回避性パーソナリティー障害」
人からの拒絶に対して極端に敏感で、失敗したり失望させられるのを忘れて、対人関係を築いたり、何か新しいことを始めることをためらいます。
●「依存性パーソナリティー障害」
自分の生活全般において世話をされたいという過剰な欲求があり、そのために並はずれて従順で、非常に受け身的です。一人になると不安にかられ、心がふさいで抑うつ状態に陥ります。
●「強迫性パーソナリティー障害」
完全主義で秩序やルールにとらわれすぎるため、柔軟性に欠け、適応性がないのが特徴です。
なお、この3グループに属さない「特定不能のパーソナリティー障害」もあります。 |
◆治療方法 |
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薬物療法 |
「パーソナリティー」は非常に個別的なものです。そこで治療は、どのような場合に苦痛を感じるのか、どのようなことで困っているのかなどを説明し、解決策を見つけていくことが中心となり、訴えから出てきた問題を、生物学的、心理的、社会的な視点を持ちながら理解し、解決できるように手助けします。その意味からも、医師との相性も重要になります。
治療方法はさまざまな立場から論じられており、決まったアプローチは存在しないのですが、問題行動や自傷他害の恐れが著しい時は、入院治療が必要となります。
原則として、薬物は対症療法的に用います。抑うつ症状に対してはSSRI、衝動性に対してはリチウムなどの気分安定薬、不安に対しては抗不安薬などを処方します。
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精神療法 |
パーソナリティーの形成には、遺伝的、生物学的な要因がかなり関与しています。ですから、
それを無理に変えようとするよりも、そのパーソナリティーのバランスが生活をしていくうえで障害にならないように、さらに、その特徴をうまく生かせるように導くことが、治療の基本的な方針となります。
個人へのアプローチは支持的な精神療法や認知行動療法などがありますが、周囲を巻き込むため家族の方や環境へのアプローチも必要になってきます。治療と同時に、再教育・再養育といった側面もあります。いずれにしても、長期にわたって根気よく進めることが大切です。 |
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